第4回 日比谷公会堂設立80周年記念「第九」演奏会の記録

2010年7月2日/日比谷公会堂

指揮:井上道義
管弦楽:NHK交響楽団
ソプラノ:小林沙羅
メゾ・ソプラノ:福原寿美枝
テノール:志田雄啓
バス:ジョン・ハオ
合唱:国立音楽大学合唱団、玉川大学芸術学部合唱団、成城合唱団

1929年に完成したこの日比谷公会堂は戦前から戦後しばらくまで、演奏会会場としてのまさにメッカであったのです。
それが今では音楽が鳴り響くことはほとんど皆無に近い状態となっているのです。
あの、1980年代後半から90年代初頭でのバブル期に於ける全国津々浦々までへの音楽ホール乱立という(ある意味、悪しき)悲しい憂き目に遭遇してしまったのです。
でもしかし、このホールこそ人々の心から欲する音楽への渇望の象徴として、そしてあの忌まわしき戦禍を潜り抜けた生き証人とも申せましょう!
ここで指揮をするマエストロ井上は語る、「ここ日比谷公会堂ではクラシックが日常的に、それこそ戦争時でもやられていた。命がけで演奏してきた人々と命がけで聴いてきた人々がいる。これって凄いことだと思う。良いホールがなければ・・・? 良い楽器がなければ・・・? お金がなければ演奏会に行けない・・・? いや、絶対にそうではないと思う!!人の心が飢えていればどんなモノでもおいしいはず・・・そういう事をとっても伝えたい!!」と。
日比谷公会堂として忘れてならないのは、1945年6月14日というまさに終戦直前に開催された第九演奏会です。
それこそ、敗戦ムードの色濃い中でありながらも、戦争終結を感じた喜びの響きではなかったのかと思うのです。
その時の演奏は・・・尾高尚忠の指揮、日本交響楽団(現NHK交響楽団)、その合唱団が今回と同じ国立音楽大学、玉川大学芸術学部、成城合唱団であったのです。
そうだ!!・・・「私たちは一体、何の為にステージで”第九”を歌うのか!?」を、あらためて考えてみるのも良いと強く思うのです。