和波孝禧&土屋美寧子 デュオ・リサイタル

ブラームス/ヴァイオリンとピアノのためのソナタ(全曲演奏会)
 ①第1番 ト長調 Op.78
 ②第2番 イ長調 Op.100
 ③スケルツォ ハ短調(「F.A.E.のソナタ」第3楽章)
 ④第3番 ニ短調 Op.108
 ⑤ハンガリー舞曲 第3番 ヘ長調(ヨアヒム編曲)
 ⑥ハンガリー舞曲 第1番 ト短調(ヨアヒム編曲)
 *(⑤⑥は、アンコール曲)
 ヴァイオリン:和波孝禧
 ピアノ:土屋美寧子
 (2010年2月20日/宗次ホール<愛知県名古屋市>)

凄まじい厳しさに貫かれた精神美(バッハ的・・・)のブラームスを聴いた。

ご夫妻による息の合った、微笑ましくも愛情たっぷりのアンサンブルでのブラームスを想像して出向いたものが、ものの見事に外されてしまった。
まるで崖っぷちに立たされた者同士の、命懸けでのせめぎ合いを思わせてしまうものであった。

はっきり言って、今回の和波さんのヴァイオリンのアプローチは、"艶やかで美しい"だとか"ロマンティック"だとかの美辞麗句を並べ立てるが如き、"磨かれた美しさ"といった感じは皆無に等しいものであった。
そして、それとは逆に・・・あえて雑音的な濁りなどをものともせず、挑戦的なまでにロマンを排した演奏を展開していたのである(まるで、ヨーゼフ・シゲティの演奏の様な・・・?)。

特に最初の"1番"では、和波さんがほとんど乱暴なまでに弓を擦り付け、不安定な音程まで曝け出していたし、土屋さんも恐ろしいほどの気迫を込めて、遂には、一・二箇所勢い余って音を外してしまったほどであった(正直、一体どうなるのか?と聴く私は戸惑いを感じてしまっていたのだ)。

"2番"に入って、徐々にけんか腰(?)の様相も和らいできたものの、第1楽章での和波さんのボウイングは相変わらずで・・・弓の弦を数本はっきりと(意図的とも思えるぐらいに)摺り切っていたのである。
そしてそれが・・・続く第2楽章では骨太の響きによる朗々としたカンタービレを歌いだしてきたではないか・・・。
そこでの、内面から滲み出る男の深い憂愁に魅了されてしまった。
そしてやっと・・・第3楽章で音楽的な解放が感じられて、思わず目頭が熱くなっていたのである。

それから、特異な位置作品である"F.A.E.のソナタ"の第3楽章は・・・3曲のソナタとは違って、若きブラームスの青春ロマンを、十分に歌い切っていたのだ。

そして最後のプログラム"3番"での、ほの暗さを伴う深い情感に満ちた演奏が、絶品なのであった。

さて、予定されていたプログラムが終わり、ここからは幸せな気分に浸れたアンコールが演奏された。
独特のリズムの溜めと共に、素晴らしいハンガリー舞曲を聴いた。

実に奥深いブラームスを聴かせてもらったものと・・・衝撃的であり、感動的な2時間であった。

(深沢啓二)

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このページは、靖が2010年2月27日 21:39に書いた記事です。

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